万年筆と写経(2)

「万年筆で写経を」このようなご提案を当社でするようになったのは、実は
最近のことです。

ご近所の老舗洋菓子職人さんから万年筆で写経をしてみたいというご相談を受け
まして、他のお客様にもこのような使い方をご提案するようになった次第です。

私が考えている実用品としての万年筆であれば、販売・調整するものとして
様々なお客様からの要望に応えて当然だと思っていたのですが、現在の万年筆を
取り巻く現状はなかなかそうではないようです。

万年筆の装飾やブランドにばかり目がいってしまい、珍品奇品がもてはやされ、
中には「太く書きたければペンを寝かせて書き、細く書きたければ立てなさい」
などと万年筆が使い手に使い方を要求するようなものまであります。

昔からこのようなお遊びとしての類もありますが、筆記具の本質とはかけ離れて
います。そのような万年筆で写経に集中したり没入することはできません。

お客様の手にあったバランスの万年筆を、お客様に合わせて調整して販売する、
という当たり前のことがなされなくなっていることかも知れません。

その意味で「万年筆で写経を」はお客様から頂いたご意見ですが、実に本質を
突いたものだと思います。自分の思うような字が書けなければ道具としての
筆記具の意味はありません。

ご興味のある方は、試しに「万年筆で写経をしてみたいのですが」とお近くの
販売店にご相談されてみると面白いと思います。