筆記具への感受性の違い

長年万年筆などの筆記具に関わっていると、職業柄ついその人の書き癖に目が
いってしまいますし、またテレビを見ていて筆記具がちょっとでも映ると、
どこのメーカーの何という製品かだいたいわかるようになります。

ニュースなどを見ていると、各国首脳が条約調印式でサインする場面がありますが、
海外の人はあまり筆記具を気にせずに使っている印象を受けます。

例えば日本製で100円で売られているようなボールペンでサインする人や、装飾だけで
その作りがあまり感心しないような万年筆でサインする人をよく見受けます。

 # 日本製のボールペンはたとえ100円であってもとてもよく作られています。
 # リーズナブルで非常に性能がよく、世界に誇れる製品だと思います。

条約の調印とは「その国の代表者たちが国と国との間で後世に影響を残す約束の場」
ですから、書きやすい100円のボールペンでもいいのですが、相手国を軽んじていると
思われはしないか、日本人の私としては心配になってしまいます。

では、装飾華美な筆記具を使えばいいかというとそうではなく、実用性から逸脱したもの
(格好だけで書きやすくないもの)は、知っている人から見ればわざとらしいと思われて
しまうのではないでしょうか。

このようなことを気にするのは私だけかも知れません。

西洋では、昔は(今でもたまに見かけますが)羽根ペンにインクをつけてサインする
文化がありますが、あれは相手との重大な約束を後で文字が消えたことを理由に反故に
したりしません、という決意を相手に敬意を持って表す故のものだと思います。

 # 羽根ペン(つけペン)で主に使われる顔料インキについてはまたの機会に説明します。

ボールペンでも万年筆でもいいのですが自分の愛用するペンで自ら署名するという行為が
現在ではあまり気にされなくなっていること、これはとりもなおさずそのように受け入れ
られる製品が今はないということかも知れません。