「万年」筆の由来

「万年筆」と呼ばれたその理由のもう一つはその素材にあります。

昔の万年筆はエボナイトという素材で作られていました。
エボナイトとは簡単にいうと天然のゴムに硫黄を混ぜて作られた加硫ゴムのことです。

万年筆に最適な素材である理由はいくつかありまして、それはまたの機会に述べること
としますが、テーマの「万年」という意味でいうと、以下のような特徴があります。

・インクの酸性やアルカリ性に対して耐久性がある
・経年劣化が極めて少ない

このことは使い手が万年筆と長く付き合う上で非常に大事な要素となります。

例えば木などは温度湿度によって膨張収縮しますので長年の間に歪みが生じてしまいます。
後になりプラスチック製品が製造されますが、紫外線には弱いものです。

弊社でモンブランの40年前の製品などが修理で持ち込まれることがありますが、
クリップ部周辺やねじ山の薄い部分からボロボロに劣化しているものがほとんどです。
仕方ないですがこれはプラスチックという素材の寿命です。

それに対して、先代がエボナイトで製造したおよそ80年前の万年筆は色褪せこそ
見られますが、歪みもなくその造型を製造当時のままで見ることができます。

つまり、万年筆はエボナイトを素材とすることで「万年」耐えうる筆記具として
世間に知られ、一生を付き合える道具として認識されるようになったのだと考えます。